
光触媒は、光が当たって初めて働きます。これは弱点というより、性能の定義に光の条件が含まれているということです。
光触媒工業会は、JIS試験方法をもとに製品認証の性能判定基準を定めています。そこには紫外線(UV)を使うものと、可視光を使うものの2系統があります。
そして、消臭に関わる欄には、可視光の基準がありません。
光の条件は、基準の中に書かれている
光触媒判定基準は、機能ごとにJISの試験方法と数値を定めています。光の条件も、そこに含まれています。
紫外線を使うものでは、抗菌の判定に「UV照度:訴求値」という条件が置かれています。訴求値とは、その商品が想定している使用場所、または効果を訴求したい場所の紫外線強度のことです。工業会の説明資料は、試験に使った紫外線強度について、昼間の窓から3m程度内側の室内に相当すると説明しています。
可視光を使うもの、いわゆる可視光応答型では、抗菌(JIS R 1752)と抗ウイルス(JIS R 1756)の判定に照度500ルクスという条件が置かれています。
「LEDや室内照明でも働く」は、「暗くても働く」ではありません。可視光応答型にも満たすべき明るさがあります。引き出しの中、家具の裏、繊維の奥、暗い納戸。ここは条件の外側です。
なお工業会は「屋内における可視光の照度について」という資料も公開しています。自分が使おうとしている場所がどれくらいの明るさかは、そちらで確認できます。
暗い場所で働いているのは、別の成分かもしれない
判定基準には暗所併用ハイブリッドタイプという区分があります。光が当たらない環境では銀による抗菌が働き、太陽光が当たる場所では光触媒が働く、という設計の製品です。
つまり、「光触媒製品」と書いてあることと、光触媒が働いていることは、同じではない。暗い場所で何かが起きているなら、それは別の成分かもしれません。
このサイトで繰り返し出てくる形です。「植物性」は原料の分類、「次亜塩素酸水」は規格を意味しない、「二酸化塩素」と書いてあっても二酸化塩素とは限らない。
表示のワードは、何が起きているかを特定しません。
消臭に関わる欄には可視光の基準がない【重要】
ここが、消臭の話としていちばん重要なところです。
工業会が製品認証を行っている機能を並べると、可視光の基準があるものと、ないものがはっきり分かれます。
| 機能 | 紫外線 | 可視光 |
| セルフクリーニング | あり | ー |
| 抗菌 | あり | あり(照度500ルクス) |
| 抗ウイルス | あり | あり(照度500ルクス) |
| 空気浄化 | あり | なし |
空気浄化は、においに関わる欄です。そこにだけ可視光の性能判定基準が設けられていません。
これは「可視光応答型では消臭できない」という意味ではありません。言えるのは、工業会の認証がその点について何も述べていないということ。空気清浄機の脱臭性能で書いたことと同じで、測定対象でないことは、できないことも、できることも意味しません。
測っている物質も、家庭のにおいとは重ならない
紫外線側の空気浄化の基準を見ると、対象は窒素酸化物・アセトアルデヒド・ホルムアルデヒド・トルエンの4つです。
アンモニアも、硫化水素も、メチルメルカプタンも、イソ吉草酸も入っていません。家庭のにおいでよく問題になる成分とは、ほとんど重なっていません。
カタログの数字が何を測ったものかは、規格の側に書いてあります。
認証マークが保証している範囲
光触媒工業会は、PIAJマークについてこう書いています。光触媒の発現する性能と安全性を認めた証であり、光触媒以外の性能や安全性を保証するものではない。
規格を作っている側が、規格の及ぶ範囲を自分で限定しています。同じ形は、空気清浄機の日本電機工業会でも、芳香消臭脱臭剤協議会の適合マークでも出てきます。
においに対して何が起きるのか
光触媒に光が当たると、周囲で酸化する働きが生まれます。においの分子に対しては、酸化して別の物質に変えるという形になります。オゾンや次亜塩素酸、二酸化塩素と同じ位置づけです。
このサイトの3段階モデルでいえば、いちばん下流です。
材料 → 菌が分解 → におい

働くのは右端に対してで、材料が残っていればにおいは出続けます。
そして、においの分子のほうから来て、表面に触れる必要があります。この条件は重曹でもカテキンでも同じで、置いておくだけ、塗っておくだけでは接触が起きません。
光触媒の場合、条件が3つになります。
- 光が当たること
- においの分子が表面に来ること
- 表面が汚れていないこと
3つ目については、工業会の説明資料に、表面に過度の汚れが付着していると十分な効果が得られないため定期的な洗浄をすすめる、という記述があります。光も、においの分子も、間に汚れがあれば届きません。
持続性は下地によって変わる
工業会の認証要件には、効果の持続性と安全性に関するデータを取得し、開示できる状況を維持することが含まれています。持続性は認証の中で扱われている項目です。
コーティングした面を洗えば被膜ごと落ちます。布製品を洗濯すれば、そこで終わります。
塗った先の素材によって、被膜がどれだけもつかは変わります。持続性のデータが開示されているか、どの下地を想定した製品かは、確認の対象になります。
酸化チタンという物質のこと
光触媒に使われる代表的な材料です。「食品添加物にも使われているから安全」という説明をよく見かけるので、位置づけを整理しておきます。
評価は分かれています。
国際がん研究機関(IARC)は、酸化チタンをグループ2B(人に対して発がん性がある可能性がある)に分類しています。根拠はラットの肺腫瘍で、吸入した場合の話です。日本の厚生労働省もリスク評価で「人に対する発がん性が疑われる」としています。
一方で、日本産業衛生学会は分類を設定しておらず、EUの分類でも発がん性物質には分類されていない、ACGIHはA4(人に対する発がん性が分類できない)としています。2Bと分類しているのはIARCだけ、という整理をしている資料もあります。
「発がん性がある」でも「無害」でもない。評価機関によって判断が違い、問題になっているのは吸入の経路です。
食品添加物であることは根拠にならない
日本では食品添加物として使われています。ただしEUは2022年2月、変異原性についての懸念が払拭できないとして、食品添加物としての認可を取り消しています。
同じ物質の評価が国と時期で違っています。食品添加物に指定されていることは、安全性の順位ではありません。次亜塩素酸水でも亜塩素酸ナトリウムでも同じことを書きましたが、食品添加物の指定は「食品にどう使ってよいか」の判断です。
業界の安全性基準に吸入は入っていない
光触媒工業会の製品認証では、急性経口毒性・皮膚一次刺激性・変異原性・皮膚感作性について安全性基準を満たすことが求められています。
この項目に吸入は含まれていません。
これは「危険だ」という意味ではありません。言えるのは、認証がその点について何も述べていないということです。空気清浄機の脱臭性能で書いたことと同じで、測定対象でないことは、問題があることも、ないことも意味しません。
そのうえで、スプレー製品は霧を作ります。吸入が論点になっている物質を、霧にして室内にまくことになります。噴霧するときは換気し、顔に向けない。人が吸い込む前提の使い方はしない、ということになります。
表示から何が読み取れるか
どういう光の条件を想定した製品か。工業会の基準は「訴求値」として、その製品が想定する使用場所の紫外線強度を扱っています。屋外向けと室内向けでは条件が違います。
光触媒以外の成分が入っているか。暗所での効果をうたう製品では、そこで働いているのは光触媒ではない可能性があります。
PIAJマークがあるか。あれば、JIS試験方法による性能評価で一定の基準を満たしています。ただし工業会自身が書いているとおり、光触媒以外の性能と安全性は範囲外です。
使う場所に光が届くか。引き出しの中、家具で隠れた壁、繊維の奥、暗い納戸。ここは想定の外側です。
まとめ
- 光触媒は、光が当たって初めて働く。光の条件は弱点ではなく、性能の定義の一部
- 工業会の判定基準には紫外線を使うものと可視光を使うものの2系統がある
- 紫外線側の抗菌の試験条件は、昼間の窓から3m程度内側の室内に相当すると説明されている
- 可視光応答型の抗菌・抗ウイルスの判定基準は照度500ルクス。「LEDでも働く」は「暗くても働く」ではない
- 空気浄化(消臭に関わる欄)には、可視光の性能判定基準がない。できないという意味ではなく、認証がその点について何も述べていない
- 紫外線側の空気浄化で測っているのは窒素酸化物・アセトアルデヒド・ホルムアルデヒド・トルエン。アンモニアも硫化水素も入っていない
- 「光触媒製品」でも、暗い場所で働いているのは別の成分のことがある(暗所併用ハイブリッドタイプ)
- PIAJマークは、光触媒以外の性能と安全性を保証しないと工業会自身が書いている
- 表面に過度の汚れがあると効果が得られない、とも書かれている
- においには酸化して別の物質に変える側として働く。流れの一番下流
- 成立するには条件が3つ。光が当たる/においの分子が表面に来る/表面が汚れていない
- 持続性は認証で扱われている項目。塗る先の素材で変わる。洗えば被膜ごと落ち、布製品は洗濯した時点で終わる
- 酸化チタンの発がん性の評価は機関によって分かれており、問題になっているのは吸入の経路
- EUは2022年2月、食品添加物としての認可を取り消している。食品添加物であることは安全性の根拠にならない
- 工業会の安全性基準の項目に吸入は含まれていない。認証はその点について何も述べていない
参考文献
性能と認証
- 光触媒工業会「PIAJ製品認証について」
- 光触媒工業会「認証機能と性能判定基準」
- 光触媒工業会標準化委員会「抗菌:UV 性能判定基準説明資料」※試験時の紫外線強度、暗所併用ハイブリッドタイプ、安全性基準の項目
- 光触媒工業会「屋内における可視光の照度について」
- 光触媒工業会「抗菌:可視光 性能判定基準説明資料」
酸化チタンの評価
- 厚生労働省 化学物質のリスク評価「酸化チタン(IV)(ナノ粒子を除く)」 ※IARC 2Bに基づく整理、評価機関ごとの分類の比較
- 酸化チタン工業会「酸化チタン(ナノ酸化チタンを含む)の安全性等について」 ※業界団体の資料。評価機関ごとの分類の比較に使用
- 国立医薬品食品衛生研究所「食品安全情報(化学物質)No.25/2024」別添 ※ドイツBfRの資料経由。EUが2022年2月7日に食品添加物としての認可を取り消した経緯


