ピューラックスのシーン別推奨使用濃度(希釈倍率)と注意点

第2類医薬品ピューラックス

ピューラックスは株式会社オーヤラックスが製造している第2類医薬品で、成分は水と次亜塩素酸ナトリウム6%です。

用法・用量に従って適切に使用することで、私たちの身近に存在する細菌(グラム陽性菌・グラム陰性菌)や真菌、ウイルスなど、ほとんどの微生物に対して殺菌効果・不活性化(不活化)が期待できるため、医療・福祉の現場や食品・水の衛生管理、家庭の衛生管理などに幅広く利用されています。

医療・福祉に関わるシーン

  • 医療器具の消毒
  • シーツや白衣等の
    漂白を兼ねた消毒
  • トイレや浴槽の消毒

食品に関わるシーン

  • 飲食器具の消毒
  • 食品製造器具の消毒
  • ふきんやダスターの
    漂白を兼ねた消毒

水に関わるシーン

  • 飲用水の消毒
  • 雑用水の消毒
  • プール水の消毒
  • 浴槽水の消毒

細菌芽胞(一部の細菌が形成する極めて耐久性の高い細胞構造)に対する殺菌効果は弱く、結核菌に対する殺菌効果は不確実など万能ではありませんが、主成分である次亜塩素酸ナトリウムはアルコールや塩化ベンザルコニウムでは効果が期待できないノロウイルスやロタウイルスなどのノンエンベロープウイルスに対しても有効なので非常に使い勝手のよい製品です。

ピューラックスと同じく次亜塩素酸ナトリウムを主成分にしている雑貨品・ハイターとの違いは純度の違いやpHの差による安全性や確実性です。

ハイターとピューラックスの違い
ハイターは衣料の漂白や除菌・消臭用の塩素系衣料用漂白剤ですが、主成分が次亜塩素酸(じあえんそさん)ナトリウムなので本来の目的以外でもさまざま...



確実な消毒効果を得るために知っておくこと

使用期限内に使用する

ピューラックスの使用期限は製造日から1年間

ピューラックスの主成分次亜塩素酸ナトリウムは高温や紫外線などによって濃度が低減していきますが、冷暗所で保存できていれば製造日から1年間は約6%を維持できます(6%を多少下回る可能性あり)。開封後は使用期限内であっても品質保持の点からなるべく早く使用してください。

紫外線量は室内蛍光灯で日光の約1000分の1、一般的なLED電球は蛍光灯の紫外線量の約100分の1なので、直射日光の当たらない涼しい場所にて保存すれば遮光袋などを被せる必要は特にないでしょう。

使用期限が過ぎてからは徐々に有効成分が低減していきますが、消毒・殺菌効果がいきなり0になるわけではありません。

ただし、基準となる有効成分濃度が分からないと細菌やウイルスを確実に殺菌・不活化することが困難になるため、メーカーは使用期限の過ぎた製品は使わないことを推奨しています。

とはいえ廃棄するのはもったいないので、殺菌・不活化目的ではなく、衣類やシーツ、雑巾などの漂白目的に使用することをおすすめします。その際は通常よりもやや濃いめに希釈して使うとよいでしょう。

ピューラックスの廃棄方法

ピューラックスの主成分である次亜塩素酸ナトリウムは低濃度でも水生生物に対して非常に強い毒性を持つため、環境に大きなダメージを与えてしまう可能性があります。廃棄時には十分に注意しましょう。
下水道や浄化槽が整備されている場合は水で薄めながらの廃棄が基本となります。特に浄化槽は微生物の働きで水を浄化する仕組みなので、有効塩素が微生物に影響を与えないためにも十分な量の水で薄めてください。
そのまま川に流す場合は必ず有効塩素を中和して廃棄してください。有効塩素の中和方法はまずガスが発生しないように次亜塩素酸ナトリウムの濃度を1%以下に薄めてからチオ硫酸ナトリウム(ハイポ)を使用するとよいでしょう。

前準備と放置時間

ピューラックスの主成分である次亜塩素酸ナトリウムは消毒対象と接触することによって有効成分が低減し、この低減度合いは消毒対象の状態により一定ではありません。

そのため、ピューラックスを使用する前に対象を洗浄し、有機物をたくさん含む汚れを除去することで確実な消毒効果を発揮します

  • まな板や器具衣類の消毒…洗浄→すすぎ→浸け置き消毒
  • トイレの消毒…洗浄→水拭き→拭き消毒
  • 汚物の処理…汚物が飛び散らないように静かに拭き取る→拭き消毒

浸け置きや拭き消毒後の放置時間は約10分。放置時間があまり短いと確実な効果は期待できませんし、逆に長すぎると消毒対象を傷めてしまう可能性があるので注意してください。



製品使用時の注意事項

  • 手指の消毒やうがいなど、人体に対して使用しないでください。
  • 噴霧での使用はしないでください。
  • 酸性の製品や、その他の製品と混合・併用しないでください(混ぜるな危険)。
  • 鉄やブリキ、銅など、大部分の金属類はサビるので使用を避けてください。
  • 衣類などに本剤をつけると、強い漂白作用で脱色するため注意してください。
  • 荒れ性の方が使う場合はゴム手袋等を着用してください。

【補足】噴霧での使用について

ピューラックスの希釈液をスプレーボトルに入れて使用している施設を見かけます。

噴霧で使用すると液体が対象に満遍なく行き渡らないことによる消毒不十分のおそれがあると同時に、眼に入ったり霧状になった希釈液を吸入するなど、様々な健康被害(失明など)につながる可能性があるので絶対やめましょう。

希釈液を持ち歩くときは、香水用のアトマイザーやコンパクトな霧吹きボトルに入れよう。自宅で使うときは、100円均一ショップで売っている、ペットボトル用スプレーノズルと合わせよう。

引用:FINDERS

YAHOO!ニュースに転載されるようなメディアでも上記のような間違った情報を発信しています。

最近は記事を書く記者のレベルが下がっており、間違った情報を平然と載せている場合もあるので信用しすぎないようにしましょう。専門家監修などと記載してあっても間違いが多々あります。

誤って原液や希釈液を飲み込んでしまった場合の応急処置は吐かせることはせずに多量の水や牛乳、生卵などを飲ませてください。眼に入ってしまった場合は水道水などのきれいな水で十分に洗い流してください。

【補足】混ぜるな危険!

ピューラックスのpHは約11.7のアルカリ性です。これに酸性の製品を加えるとpHが酸性側に傾き、一定の値(pH5程度)を超えると猛毒の塩素ガスが発生します。塩素ガスは非常に毒性が強く僅かな量を吸入しただけでも死に至るため使用する上で最大限の注意が必要なのです。

以前から時折ネット上で見かけるのがピューラックスなどの次亜塩素酸ナトリウム製剤にクエン酸や炭酸水などの酸性の液体を混入して弱酸性域の次亜塩素酸水溶液(疑似的な次亜塩素酸水)をつくるというもの。

次亜塩素酸ナトリウムの水溶液中には次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンが存在します。この存在比率は溶液のpHに依存し、アルカリ性域では次亜塩素酸イオンが、中性から酸性域では次亜塩素酸が多くなります。

次亜塩素酸は分子サイズと電気的に中性な性質から、受動拡散によって細胞壁と形質膜を透過して細胞の内部まで入り、細胞の内と外の両面から酸化作用を及ぼすため次亜塩素酸イオンより強い殺菌作用を発揮します(次亜塩素酸イオンは細胞の外からの酸化作用)。

従って次亜塩素酸ナトリウム製剤のpHを弱酸性へと傾ければ不安定ながらも安全で強力な殺菌作用をもつ液体をつくることは可能ですが、以前次亜塩素酸ナトリウム製剤メーカーの方とお話をした時にこの行為は「混ぜるな危険」にあたるので「個人」では絶対行わないよう注意を受けました(専用の特殊な機械を用いて安定性の高い高精度の次亜塩素酸水溶液を製造している「企業」は存在しておりこれに関しては通常の次亜塩素酸水と化学的には同等、保存性においては電解タイプより優れている)。

確かに理論上は緩衝作用(pHをほぼ一定に保つ働き)のある炭酸水などを使用すればリスクは少なくなるかもしれないが、万が一のことが起こった場合(塩素ガスの発生)のダメージが大きすぎるとのこと。メーカーとしては水で希釈して使用してもらう製品なのでそれ以外の使い方をして何かあっても責任はとれない、効果についても確実ではないという話でした。

どのメーカーの人間でも答えは同じと言っていたので、ピューラックスの製造メーカーであるオーヤラックスも絶対禁止のスタンスで間違いないと思います。気になる方はメーカーに直接確認してみてください。