猫の臭いと空気清浄機・オゾン|効果があるのは「出たあとのにおい」だけ

怒る猫

空気清浄機もオゾン発生器も、すでに空気中に出ているにおいを減らす機器です。においを出している物質がその場に残っていれば、減らしたそばから出続けます。

そして、家庭用空気清浄機の性能基準を定めている業界団体自身が、常時発生するにおいの成分(建材・ペット臭など)はすべて除去できるわけではないと書いています。

においがどこで生まれ、機器がどこに働くか

においは、材料 → 菌が分解 → においという流れで生まれます(→悪臭の原因菌)。

においが生まれる流れと対策の3か所を示した図

猫の尿では、この流れが2本あります。

  • 1本目:尿素(材料) → 細菌が分解 → アンモニア(におい)

排泄した直後の尿はほとんどにおいません。尿素そのものは無臭だからです。時間が経つと細菌が尿素を分解してアンモニアに変え、ここで強いにおいになります。

  • 2本目:フェリニン(材料) → 分解 → 3-MMB(におい)

フェリニンは、猫の仲間だけが作るアミノ酸です。これが分解されると 3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(3-MMB) という硫黄を含む物質になり、猫の尿の「あの」においの成分のひとつになります。

なお、この経路の研究でよく一緒に出てくるコーキシンは、フェリニンの合成に関わるたんぱく質であって、においの成分ではありません。フェリニン(アミノ酸)とコーキシン(たんぱく質)は別のものです。

そして機器が働くのは、この流れの3番目だけです。

すること 流れのどこに働くか
尿を早く見つけて拭き取る、洗う 材料(一番上流)
除菌する 菌
空気清浄機・オゾン・消臭剤 におい(一番下流)
換気する におい(外へ出す)

材料が残っていれば、菌はそこで作り続けます。下流でいくら減らしても、上流は止まりません。



業界団体が書いている脱臭性能の範囲

空気清浄機

家庭用空気清浄機の性能は、日本電機工業会(JEMA)の規格 JEM 1467 に基づいて測定されています。加盟メーカーはこの基準に従って測定しています。

そのJEMAが、よくある質問のページに書いていることが3つあります。

すべて除去できるわけではない、と書いてある

JEMAは、空気清浄機ですべての汚れが除去できるのかという問いに対し、タバコの有害物質(一酸化炭素など)は除去できないこと、そして常時発生するにおいの成分(建材・ペット臭など)はすべて除去できるわけではないことを挙げています。

外から持ち込んだ批判ではなく、規格を定めている側が書いていることです。

脱臭性能が測っているのは3つの成分

JEMAによれば、脱臭性能の測定対象は、紙タバコの煙に含まれるガス成分のうち、アンモニア・アセトアルデヒド・酢酸の3つです。JEM 1467では、測定の再現性が高いという理由で、空気の汚れの目安に紙タバコの煙を使っています。

ここで、さきほどの2本の流れと突き合わせてみます。

猫の尿のにおいの成分 脱臭性能の測定対象か
アンモニア(尿素から) 入っている
3-MMB(フェリニンから) 入っていない

ただし、測定対象でないことは、除去できないという意味ではありません。カタログに載っている脱臭の数字が、その成分について何も述べていない、ということです。

猫の尿のにおいのうち、アンモニアの側については測られている。猫に特有の含硫化合物の側については、その数字は答えていない。この区別だけが言えます。

においについては「発生源の近くに置く」

設置場所について、JEMAはにおい対策では発生源の近くに置くことを挙げています。花粉なら床付近、ホコリならソファやベッドの近く、というのと並びです。

機器の側も、発生源がその部屋にあることを前提にしています。

ついでに、2つの数字の意味

  • 適用床面積は、JEM 1467で「30分で清浄できる部屋の広さ」と定義されています。においが消えるまでの時間ではありません
  • 脱臭フィルターの交換目安は、「においの除去率が半分になったとき」とされています。集じん側とは基準が別で、フィルターの種類によっても異なります

なお、空気清浄機に換気の機能はありません。においを外に出す働きは、窓や換気扇の側にあります。

オゾンには別の判断が要る

オゾンは強い酸化力を持ち、においの分子を酸化して別の物質に変えます。ここまでは空気清浄機と同じ「下流」の話です。

そのうえで、オゾンには機器の選択そのものに関わる材料が2つあります。

国民生活センターの調査(2009年)

国民生活センターは、家庭用オゾン発生器7銘柄を対象に安全性のテストを行い、結果を公表しています。「気分が悪くなった」といった相談が寄せられていたことがきっかけです。

報告では、使用方法によっては危険なオゾン濃度になるものがあり、発生量などの表示を見ても専門知識のない消費者が安全に使うのは難しいとされ、消費者へのアドバイスとして購入等は避けた方がよいと書かれています。

2009年の調査です。機器も表示も当時から変わっている可能性があります。

消費者庁の措置命令(2021年)

消費者庁は2021年7月28日、オゾンを使った除菌消臭器について、景品表示法に基づく措置命令を出しています。20畳までの空間で新型コロナウイルスを除去できるかのように示す表示に対して、実際の空間での効果を裏づける資料が示されなかった、というものです。

これはウイルスの除去についての表示に対する判断であって、脱臭についての判断ではありません。ただし「機器から出たオゾンが、部屋全体に、表示どおりの働きをするか」という論点は共通しています。

同じく空間での除菌をうたう商品では、二酸化塩素を使うものについても、2021年12月に製造販売業者2社に措置命令が出ています。

動物は部屋から出られない

人がいる環境での使用について公的機関が慎重な見解を示している機器を、猫や犬がいる部屋で使うことになります。動物は、その部屋から自分で出ていけません。

これは重曹の記事でも書いた線引きと同じです(→重曹はペットの体には使えません)。

においが減ると発見が遅れる

ここが、機器を24時間動かしているときに起きることです。

においには、発生源がどこにあるかを教えるという働きがあります。下流でにおいを減らせば減らすほど、粗相そのものに気づくのが遅くなります。

そして時間が経った尿は、床材の継ぎ目やカーペットの奥に入り込みます。染み込んだあとは、表面の掃除では届きません。表面に置いた粉や、空気中に働く機器では、その深さまで届かないためです。

機器の性能の問題ではありません。下流の対策を強くすると、上流の異常が見えにくくなるという順番の問題です。

繰り返す粗相は掃除の問題ではないことがある

同じ場所を何度も汚す、トイレ以外で排泄する、尿のにおいが変わった。これらは受診の理由になります。

  • においが強くなった。細菌性膀胱炎では、尿素を分解する菌(ウレアーゼ産生菌)が増え、アンモニアが増えると説明されています
  • においが弱くなった。岩手大学などのグループは、腎臓病が進んだ猫では尿中のフェリニンが著しく減り、それに伴って尿臭のもとになる揮発性の硫黄化合物も減ることを報告しています

においが強くなったときだけでなく、弱くなったときも動物病院に相談する理由になります。

機器でにおいを消していると、この2つのどちらにも気づきにくくなります。

上流にあたるのは何か

掃除

順に、上流から並べます。

1. 早く見つける

これが一番上流です。においが手がかりになるので、機器を常時動かす部屋では、目で見るほうの見回りが必要になります。

2. 吸い取る、洗う

材料そのものを減らします。粉や消臭剤をかけるより先に、ペーパーで押さえて水分を取ります。カバー、マット、布は外して洗濯に回します。

3. トイレの取り除く回数

猫のトイレは、材料が定期的に供給される場所です。掃除の回数を増やすほうが、下流の機器を強くするより効果的です。

4. 繰り返すなら受診

上述のとおりです。

5. 機器は、この上に足す

使うなら、業界団体の設置の説明どおり、発生源の近くに置くことになります。部屋の中央でも玄関でもなく、トイレのそばです。

機器の表示で見るところ

商品ごとの効果について、当サイトは判断しません。表示を読むときに位置づけがはっきりする項目だけ挙げます。

表示 何を意味しているか
適用床面積 JEM 1467で「30分で清浄できる部屋の広さ」。においが消えるまでの時間ではない
脱臭性能 測定対象はアンモニア・アセトアルデヒド・酢酸。それ以外の成分については何も述べていない
脱臭フィルターの交換目安 においの除去率が半分になったとき。集じん側とは基準が別
「空間除菌」の表示 オゾン・二酸化塩素を使う商品で、消費者庁の措置命令が出た例がある



まとめ

  • 空気清浄機もオゾン発生器も、すでに空気中に出ているにおいを減らす機器。流れの一番下流にある
  • 材料(尿)が残っていれば、菌はそこで作り続ける。下流を強くしても上流は止まらない
  • 日本電機工業会は、常時発生するにおいの成分(建材・ペット臭など)はすべて除去できるわけではないと書いている
  • 脱臭性能の測定対象はアンモニア・アセトアルデヒド・酢酸の3成分。猫の尿のアンモニアは入っており、3-MMBは入っていない
  • ただし測定対象でないことは、除去できないことを意味しない。カタログの数字がその成分について何も述べていない、ということ
  • においについての設置場所は、業界団体も発生源の近くとしている
  • オゾン発生器には、2009年の国民生活センターの調査と、2021年の消費者庁の措置命令という材料がある。動物はその部屋から出られない
  • においを減らすほど、粗相の発見が遅れる。染み込んだあとは表面の掃除では届かない
  • 尿のにおいが強くなったときも、弱くなったときも、受診の理由になる

参考文献

空気清浄機の性能と範囲

  1. 一般社団法人 日本電機工業会「空気清浄機 Q&A(よくある質問)」
  2. 一般社団法人 日本電機工業会「空気清浄機とは」
  3. 日本電機工業会規格 JEM 1467(家庭用空気清浄機)

猫の尿のにおい

  1. Miyazaki M, Yamashita T, Suzuki Y, Saito Y, Soeta S, Taira H, Suzuki A. A major urinary protein of the domestic cat regulates the production of felinine, a putative pheromone precursor. Chemistry & Biology. 2006;13(10):1071-1079. doi:10.1016/j.chembiol.2006.08.013
  2. 理化学研究所・岩手大学「ネコの尿のにおいのもとになる物質の生成機構を解明」プレスリリース. 2006年10月21日
  3. 岩手大学「ネコの尿のにおいが薄くなったら要注意! 腎臓病の発見につながる新知見」

オゾン・空間除菌

  1. 独立行政法人 国民生活センター「家庭用オゾン発生器の安全性」2009年8月27日公表
  2. 消費者庁「オゾン除菌消臭器に係る景品表示法に基づく措置命令」2021年7月28日
  3. 消費者庁「二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の製造販売業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について」令和3年12月16日

受診の目安

  1. ペットメディカルサポート「猫のおしっこが臭い原因とは?」(獣医師監修)