次亜塩素酸水効果なしは間違い?NITEの情報を正確に捉えよう

中国武漢市に端を発した新型コロナウイルス感染症。

緊急事態宣言による長期の自粛で感染者数はかなり減少しましたが、東京や北九州市を中心に新規感染者は発生しているのでまだまだ予断を許さない状況が続いています。

従って、今後も私たちはできる限りの感染対策を行う必要があるのですが、先日来話題になっているのが「次亜塩素酸水」関連の話です。

アルボナースやヒビスコールといった信頼性の高い国産アルコール消毒剤の品切れ状態が長らく続き、代替として輸入された海外製のアルコール剤は成分偽装や濃度不足で使い物にならない、挙句の果てには国が全国の医療機関にあっせんしたアルコール消毒液の濃度が低く医師会の過半数から不満の声が上がる始末。

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、国が医療機関に優先的に供給したアルコール消毒液に苦情が寄せられた問題で、日本医師会は3日、全国47の医師会に調査を行ったところ、過半数の25医師会から何らかの問題の指摘があったことを明らかにした。

引用:医師会の過半数から問題指摘 国供給消毒液、濃度や価格―日医調査・新型コロナ

このような状況で、地方公共団体や企業、そして個人が頼りにしたのが次亜塩素酸水という存在です。



次亜塩素酸水の簡単な説明

次亜塩素酸水は厚生労働省が食品添加物に指定している、生成装置から直で使う電気分解タイプの「強酸性水」「弱酸性次亜塩素酸水」「微酸性次亜塩素酸水」と容器詰めされた電気分解タイプや次亜塩素酸ナトリウムと酸性のpH調整剤を混合したタイプの次亜塩素酸水に大別されます。

次亜塩素酸水の主成分は次亜塩素酸

それぞれ違いはあるのですが、これら食品添加物の次亜塩素酸水も一般的に販売されている次亜塩素酸水も主成分は共通して次亜塩素酸(HOCl=HClO)です。

次亜塩素酸の存在比率は溶液のpHに依存し、アルカリ性域では次亜塩素酸イオンが、中性から酸性域では次亜塩素酸が多くなります。両者は別々の存在ではなく、簡単にいえばpHによって形が変わるということですね。

pHって何?
水溶液中の水素イオン濃度を表す指数で「ピーエイチ」や「ペーハー」と呼ばれています。
水溶液は基本0~14の数値の範囲に収まり、7付近を中性、7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性となります。

液性pHの範囲身近な物質例
酸性pH < 3.0塩酸、赤ワイン、コーラ
弱酸性3.0 ≦ pH < 6.0醤油、ヨーグルト
中性6.0 ≦ pH ≦ 8.0純水、牛乳
弱アルカリ性8.0 < pH ≦ 11.0重曹、セスキ炭酸ソーダ
アルカリ性11.0 < pHキッチンハイター、石灰水

※pHの境界は明確に定められていない為、雑貨工業品品質表示規程を例にする

一部電気分解タイプの次亜塩素酸水を販売している業者が混合タイプは次亜塩素酸水の定義に当たらないという情報を流していますが、東京工業大学や三重大学、北海道大学などの専門家らが所属する団体はこれを誤解と否定しています。

電解法以降に新しい技術として開発されたニ液混合法やパウダー製法による次亜塩素酸水溶液製品が普及していますが、既存団体が食品添加物としての申請時点で命名した次亜塩素酸水の定義に当たらないかのような誤解が広がっており、現下のコロナウィルス対策への除菌液不足という非常事態において本来感染防止に役立つ除菌液普及の阻害要因になっています。

次亜塩素酸水溶液普及促進会議

pHがアルカリ性の時に多く存在する次亜塩素酸イオンは細胞の外からしか酸化作用を及ぼせませんが、次亜塩素酸は受動拡散によって細胞壁と形質膜を透過し細胞の内部まで入ることができるため、内と外の両面から酸化作用を及ぼすことができます。

この仕組みによって主成分が次亜塩素酸の水溶液は高い殺菌作用を発揮できるのです。

ただし、この次亜塩素酸は非常に不安定な存在なので有機物などに触れてしまうと急速・強力に反応し、短時間で分解してしまいます。逆にいえばこの性質が瞬時に細菌やウイルス、臭い成分などに反応して殺菌・不活化・消臭という役割をこなし、残留せずに分解するという次亜塩素酸水の強力の除菌消臭力と高い安全性の根拠といえるでしょう。

次亜塩素酸水の保存性と安全性

それから、時折ネット上で見かけるのが遮光性の低い容器に入れておくと数時間で水に戻るという意見。これは正しくもあり間違いでもあります。

Amazonや楽天市場などでも販売されている有効塩素を計測できる試験紙でテストすれば分かると思いますが、正確に生成された次亜塩素酸水は意外と長く有効塩素を保っています。

 

私は何度か電解タイプと混合タイプをテストしてみましたが、室内なら透明の容器に入れていてもpHは弱酸性のままでそれほど有効塩素も下がらずに維持できていました。ただし、電解タイプの方が急激に低減してから中ほどで維持していたのに対して混合タイプは緩やかに低減していくイメージで、維持力は混合タイプの方が優位といえるでしょう(混合タイプで2か月経過後10%減くらい)。

正しいといったのは室外で保管した場合です。次亜塩素酸水は紫外線によって急激に分解が進むので直射日光に曝し続ければ数日で効果を失います(高温にも弱い)。

もちろん遮光性の高い容器に入れるのがベストではありますが、室内で直射日光に曝さなければ、紫外線量は室内蛍光灯で日光の約1000分の1、一般的なLED電球は蛍光灯の紫外線量の約100分の1なので、透明容器でも特に問題はありません。

次に、ウイルスや細菌に大ダメージを与える薬品なんだから人間にも大きなダメージを与えるはずという意見。これについては、ウイルスはDNAやRNAとタンパク質で構成される物質ですし、細菌に関しても単細胞原核生物なので、多細胞生物である私たち人間とはそもそものつくりが異なります。

ただし大量に飲んだり、お風呂に入るように高濃度の次亜塩素酸水の中に浸かればもちろん影響は出るでしょう。もちろんそんな事をする人は誰もいないと思いますが。