悪臭のもとになる代表的な成分

臭気強度と濃度の関係-特定悪臭物質
画像:https://www.env.go.jp/

悪臭とは私達が感じる事ができるニオイの中で不快に感じるものを指します。

ただし、どのニオイを不快に感じるか、そしてどれくらいの強さで不快に感じるかなどは個人差があります。

“匂い”の感じ方は個人差が大きい

たくさんの果実

例えば香水や果実のニオイは弱いニオイだと良い匂いと感じる人が多いですが、強いニオイだと不快で耐えがたい悪臭だと感じる人が多いようです。

家庭における主要な特定悪臭物質

このページで不快に感じる可能性がある全てのニオイ成分を紹介するのは不可能ですので、悪臭防止法に基づいて「不快な臭いの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質」とされている特定悪臭物質の一部を紹介します。

アンモニア

アンモニアは知らない人がいないのではないかと思うほど有名な悪臭成分で、窒素系悪臭のひとつです。

「アンモニア=おしっこの臭い」と連想する人も多いと思います。

清掃が行き届いていない公衆便所などはアンモニア臭いと感じることが多いですが、これは飛び散った尿の中の尿素が細菌によって分解されアンモニアが発生し悪臭を放っているからです。

アンモニア臭をしっかりと消臭する事はペットや介護の臭い対策において非常に重要です。

数多くの悪臭の原因であるアンモニアは百害あって一利なしの存在のように思えますが、意外にも私達の生活の中で重要な役割を果たしています。
具体的には窒素肥料の原料や冷蔵庫・冷凍庫の冷媒、パンや洋菓子などの膨張剤などさまざまです。

メチルメルカプタン

腐った野菜(玉葱など)の臭いや糞尿の臭いと評される強い悪臭を放つ成分で、メタンチオールとも呼ばれます。

蛋白質などが分解する時の発生する硫黄系悪臭物質で、口臭や屁、排泄物などに含まれます。

少量で強い悪臭を示すのでガス漏れを感知しやすくする為の付臭剤(無臭のものにニオイをつけ加えるもの)として利用されています。

世界一臭い物質として認定されているエタンメルカプタン。メチルメルカプタンと同じ硫黄系悪臭物質で名前もよく似ていますが異なる物質です。エタンメルカプタン(CH3CH2SH)≠メチルメルカプタン(CH3SH)。

硫化水素

腐った卵の臭い(腐卵臭)と評される強い刺激臭を放つ硫黄系悪臭物質。

硫黄分を含む蛋白質が微生物によって嫌気分解された時に発生します。

タバコや排泄物、口臭などに含まれており非常に分解しにくい厄介な悪臭です。

硫化水素は目や鼻、喉の粘膜を刺激し、高濃度ガスを吸入すると死亡する可能性もある非常に危険な物質です。さらに高濃度の硫化水素は嗅覚を麻痺させる作用があり、致死濃度でも知覚できない可能性があります。

トリメチルアミン

低濃度で腐った魚の臭い、高濃度でアンモニアによく似た臭いなどと表現される窒素系悪臭のひとつです。

家庭の悪臭の主要な成分であり、魚などの魚介類や生ゴミ、トイレ、ペットの体臭(特に犬)などから広く検出されます。

悪臭防止法における特定悪臭物質は最新の平成23年時点で22物質ですが、その中でもアンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、トリメチルアミンは四大悪臭物質と呼ばれています。

アセトアルデヒド

青臭く刺激的な悪臭を放つアルデヒド系悪臭のひとつで、エタナール、酢酸アルデヒド、エチルアルデヒドなどと呼ばれます。

ニコチンの吸収や効果を増幅する作用や燃焼促進作用がある為、タバコの添加物として添加されているのでアセトアルデヒドはタバコの煙の悪臭成分のひとつとなっています。

その他、呼気や皮膚ガス(体の表面から放たれる揮発性物質の総称)として放散される事から体臭の原因にもなります。

酢酸エチル

刺激的なシンナーのような臭いが特徴的な脂肪酸系悪臭成分。

パイナップルやバナナなどにも広く含まれる果実臭成分であり、人によっては不快に感じない人もいるかもしれませんが、汗や生ゴミなどに含まれている家庭における代表的な悪臭成分のひとつです。

昆虫標本を作る時に防腐や軟化の効果がある殺虫剤として広く利用されています。

イソ吉草酸

3-メチルブタン酸、イソバレリアン酸とも呼ばれる脂肪酸系悪臭成分で、刺激を伴う独特の発酵臭が特徴です。

カーペットなどの布製品にイソ吉草酸が含まれた汗が付着するなどして家の不快な臭いの原因のひとつになります。

体臭や口臭などにも幅広く含まれていて、足の裏の臭いの原因はこのイソ吉草酸ともいわれています。

イソ吉草酸の名前の由来ですが、「イソ」は異性体に付けられる接頭辞、吉草は根にイソ吉草酸を含む特有の香気があるカノコソウという多年草の別称です。ややこしいですが、イソ吉草酸の臭いがする草「吉草」に接頭辞である「イソ」をつけてイソ吉草酸になったと思われます。

今回紹介したもの以外にも硫化メチル、二硫化メチル、プロピオンアルデヒド、イソブタノールなどさまざまな悪臭成分が存在します。

優れた消臭剤に求められるのはこれらの悪臭成分を効率よく分解したり、違う物質に変えたり、包み込んで臭わなくさせたりする事です。

以上、このページでは悪臭のもとになる代表的な成分の一部を紹介しました。

参照

> 悪臭防止法の概要|環境省