茶葉・茶殻の消臭は重曹の「逆」|カテキンが結合するのはアンモニアや魚の生臭さ

ほうじ茶

茶葉の消臭で働いているのはカテキンで、結合するという報告があるのは、魚の生臭さ(トリメチルアミン)やアンモニア、硫黄系のにおいです。酸性のにおいを中和する重曹とは、担当が逆になります。

似ているのは、どちらもにおいに直接触れないと働かないという点のほうです。

茶の消臭で働いているのはカテキン

公益財団法人 世界緑茶協会は、お茶の消臭についてこれまでに報告されている内容をまとめています。そこに挙げられているのは、次のようなものです。

  • 緑茶カテキン類は、ニンニクのアリルサルファイドや魚のトリメチルアミンと結合して、そのにおいを消すという報告がある
  • 口臭の原因のひとつであるメチルメルカプタンとも直接結合するという報告がある
  • 部屋のにおいの原因物質であるアンモニア臭や、合板などの建材から出るホルムアルデヒドなどのアルデヒド臭を消す効果についての報告がある
  • アルデヒドの場合は、カテキン類のような「フラバン-3-オール」と呼ばれる化合物と化学的に重合することが知られている

そして、こうした働きは空調機用の消臭フィルタに使われる形で実用化されているとされています。

ここで押さえておきたいのは、実用化された形がフィルタだという点です。フィルタは、空気を強制的に通すことで、においの分子をカテキンに接触させています。

重曹とは、担当が逆

茶葉の消臭は重曹とよく似ている、と書かれることがあります。においの側から見ると、そうではありません。

においの種類 重曹 茶のカテキン
酸性 イソ吉草酸(足のにおい)、酢酸 中和する 結合の報告を見つけられなかった
塩基性 アンモニア、トリメチルアミン(魚) 中和できない 結合の報告がある
硫黄系 メチルメルカプタン 中和できない 結合の報告がある
アルデヒド ホルムアルデヒド 中和できない 重合の報告がある

重曹が弱アルカリ性で酸性のにおいを中和するのに対して、カテキンについて報告が集まっているのは、塩基性の側と硫黄系、そしてアルデヒドです。

重曹で臭いは消える?消臭できる2つの条件と「置いておくだけ」が効きにくい理由
重曹の消臭が働くには、においが酸性であることと、直接触れることの2つが要ります。粉を置いておくだけでは届きません。靴や生ゴミでは条件がそろい、おむつやサニタリーではそろわない理由を整理しました。

「イソ吉草酸に対するカテキンの報告を見つけられなかった」というのは、効かないという意味ではありません。今回の作業では確認できなかった、というだけです。

似ているのは、もう一方の条件。重曹もカテキンも、においの分子がそこまで来て触れないと何も起きません。置いておくだけでは届きにくい、という点は共通しています。



カテキンとフィトンチッドは別のもの

「フィトンチッド」という言葉が、茶葉の消臭の説明に出てくることがあります。ここは分けたほうが分かりやすくなります。

フィトンチッドは、植物が発散する揮発性の物質の総称で、主な成分はテルペン類とされています。1930年ごろにロシアのトーキンが名づけた言葉で、森林浴の説明に使われるものです。

カテキンは揮発しません。空気中に出ていかないので、においのほうから来て触れる必要があります。

出ていくか 働き方
フィトンチッド(テルペン類など) 揮発して空気中に出る 香りが加わる
カテキン 揮発しない 来たにおいの分子と結合する

方向が逆です。同じ「植物由来」でまとめると、この違いが見えなくなります。

市販の植物性消臭剤にも、この2種類が混ざっています。香りが立つものは精油系、無香のものはカテキンなどの抽出物系であることが多いので、パッケージの成分表示で確かめてください。

なお、精油が入っているものは、猫のいる家では別の判断が要ります(→重曹はペットの体には使えません)。

用途ごとに、条件がそろうかどうか

条件は2つです。

  • においの種類が合っているか(カテキンの場合は、塩基性・硫黄系・アルデヒド側)
  • 茶葉に直接触れるか
使いどころ におい 種類が合うか 直接触れるか
魚を煮た鍋 トリメチルアミンなど ○ 煮る
生ゴミ 混合 △ 一部 ○ ふりかける
靴の中 イソ吉草酸(酸性) △ 報告が見つからない ○ 詰める
冷蔵庫 食品由来の混合 △ 一部 × 置くだけ
下駄箱 混合 × 置くだけ
電子レンジの庫内 調理由来の混合 × 置くだけ
魚焼きグリル 焦げついた脂

条件が両方そろうのは魚を煮た鍋

魚の生臭さの成分としてトリメチルアミンが挙げられており、カテキンがこれと結合するという報告があります。そして鍋で煮れば、確実に接触します。

鍋に水を8分目ほど入れ、茶殻を一握り加えて中火にかけ、沸騰したら弱火で10分ほど煮る。湯を捨ててから、いつもどおり洗います。

ただし、その前に洗うことが先です。鍋に残っているのは、においの分子だけではなく、においを出し続けている脂や汚れのほうだからです。

「置いておくだけ」は、重曹と同じ理由で外れる

冷蔵庫や下駄箱に、瓶に入れた茶葉を置く。よく紹介される方法ですが、これはにおいの分子が自然にそこまで来るのを待っている状態です。

重曹の記事でも、置くだけでは届かないという理由で、冷蔵庫と下駄箱を外しています。茶葉でも同じことになります。

空調機用のフィルタに実用化されているのは、空気を強制的に通すからでした。瓶を置いただけの状態とは接触の量が違います。

靴の中は、条件が半分

出汁パックに茶葉を詰めて靴に入れる方法は、接触の条件は満たします。

ただし、靴のにおいの主な成分として挙げられるのはイソ吉草酸で、これは酸性です。カテキンがこれと結合するという報告を今回は見つけられませんでした。接触は起きるが、相手が合っているかは分からないという状態です。

酸性のにおいという点では、重曹のほうが機序の説明がつきます。

生ゴミは別の問題がある

生ゴミのにおいは、複数の成分が混ざっています。そして次の節の問題が、ここで一番大きく出ます。

加熱は×

茶殻を電子レンジで加熱する方法、熱いグリルに茶葉をまく方法は、この記事では扱いません。

国民生活センターの案内

国民生活センターは2026年3月25日、電子レンジによる事故についての調査結果を公表しています。PIO-NETには、2020年4月から2025年12月までの5年9カ月で、電子レンジ使用中の事故に関する相談が521件寄せられていたとされています。

テスト結果として挙げられているものに、次の2つがあります。

  • 加熱しすぎると食品が発煙・発火し、爆発的に燃焼するなど危険な状態がみられた
  • 尖っている部分や角が多い食品を少量、高出力で加熱すると、エッジランナウェイ現象により、加熱しすぎたつもりはなくても食品に焦げが発生した

そして消費者へのアドバイスに、調理以外の目的には使用しないようにしましょうという項目が入っています。

茶殻は、少量で角が多く、水分の少ないものです。2つ目のテスト結果に挙げられている条件に、そのまま当てはまります。

熱いグリルも同じ理由

熱くなったグリルに乾いた茶葉をまく方法も外します。理由は電子レンジと同じで、水分の少ない植物片を高温にさらすことになるためです。

そもそもグリルのにおいの元は、焼き網や受け皿に焦げついた脂です。においの分子だけでなく、それを出し続けているものがそこに残っています。冷ましてから落とすほうが上流にあたります。

万一、庫内で発煙・発火したら

国民生活センターの案内では、動作を停止させて電源プラグを抜き、扉を開けずに煙や火が収まるのを待つこととされています。

湿った茶殻を、そのまま置かない

使用済みの茶殻は水分を含んでいます。乾かさずに置けば、そこが菌やカビの場所になります。

材料 → 菌が分解 → においという流れで見ると、湿った茶殻は「材料」の側に近いものです(→悪臭の原因菌)。においを減らすつもりで、においの材料を足すことになりかねません。

においが生まれる流れと対策の3か所を示した図

生ゴミにふりかける方法が一番これに当たります。生ゴミ自体が湿っているところに、湿ったものを足す形になるためです。

使うなら乾かしてからにします。そして交換の目安については、一概には言えません。環境によって変わり、根拠のある日数を確認できていないためです。においが戻ってきたら替える、という判断のほうが実態に合います。

茶葉が働くのは、流れの下流

最後に位置づけを整理します。

すること 流れのどこに働くか
鍋を洗う、生ゴミを出す、食品を取り出す、靴を乾かす 材料(上流)
除菌
茶葉・重曹・消臭剤 におい(下流)

茶葉が働くのは、においが生まれたあとです。においを出しているものがその場に残っていれば、減らしたそばから出続けます。

  • 鍋 … 先に洗う
  • 冷蔵庫 … においの元になっている食品を先に取り出す
  • 靴 … 履かない日を作って乾かす
  • 生ゴミ … 出す回数を増やす

茶葉は、この上に足すものです。



まとめ

  • 茶の消臭で働いているのはカテキン。結合の報告があるのはトリメチルアミン(魚)、メチルメルカプタン、アンモニア、そしてアルデヒド(重合)
  • 重曹とは担当が逆。重曹は酸性のにおいを中和する。カテキンについて報告が集まっているのは塩基性・硫黄系・アルデヒド側
  • 似ているのは直接触れないと働かないという条件のほう。冷蔵庫や下駄箱に置くだけでは届きにくい
  • 実用化されている形がフィルタなのは、空気を強制的に通して接触させているから
  • カテキンとフィトンチッドは別のもの。フィトンチッドは揮発して出ていく物質、カテキンは揮発せず来たにおいと結合する
  • 条件が両方そろうのは、魚を煮た鍋。ただし先に洗うほうが上流
  • 靴の中は接触の条件は満たすが、イソ吉草酸に対する報告を見つけられなかった
  • 電子レンジやグリルで加熱しない。国民生活センターは調理以外の目的に使用しないよう案内しており、少量・角の多い・水分の少ないものは焦げやすいとされている
  • 湿った茶殻をそのまま置かない。乾かさなければ、においの材料を足すことになる

参考文献

茶カテキンと消臭

  1. 公益財団法人 世界緑茶協会「消臭効果」(執筆:芳野恭士)O-CHA NET ※同ページが挙げる原著(小國・原 1990/Yasuda & Arakawa 1995, Biosci Biotech Biochem 59:1232/Fulcrand et al. 1996, J Chromatogr A 752:85 ほか)は、当サイトでは未読
  2. 独立行政法人 工業所有権情報・研修館「特許流通支援チャート 消臭・脱臭剤(化学的方法)」2006年3月(茶葉のカテキンを用いた消臭剤の出願動向)

フィトンチッド

  1. 岐阜県森林研究所「フィトンチッドと森林浴について」

電子レンジの事故

  1. 独立行政法人 国民生活センター「電子レンジによる事故を防止!使い方を再チェックしませんか?」2026年3月25日公表

においの成分

  1. Ara K, et al.(足のにおいとイソ吉草酸。当サイト内の悪臭の原因菌を参照)