
重曹の使い方は、大きく3つです。
粉のまま、水に溶かす、少量の水でペーストにする。
そして選ぶ基準は、こすりたいのか、濡らしていい場所なのかの2つしかありません。
重曹に何ができるか
弱アルカリ性、水に溶けにくい、粒がやわらかい。
重曹の使い方は、この3つの性質から出てきます。
アルカリが中和するのは酸性のもの
においの成分にも、汚れにも、酸性のものがあります。そして、アルカリは酸を中和します。
- 酸性のにおい … 足のイソ吉草酸、生乾き臭の4-メチル-3-ヘキセン酸、ワキのにおいの3-メチル-2-ヘキセン酸。いずれも脂肪酸です。
- 時間の経った皮脂や油の汚れ … 皮脂や調理油は放置すると酸化して脂肪酸を生じます。この部分は酸性です。

油そのものを中和することはできない
「重曹は油を中和して落とす」という説明を見かけますが、油脂そのものは中性です。中和できません。
働く余地があるのは、酸化して脂肪酸になった部分。新しい油汚れやこびりついた油に対して、弱アルカリの重曹でできることは限られます。
アンモニアには働かない
トイレやペットまわりのアンモニア臭は塩基性です。
アルカリを足しても中和にはなりません。この場合は、尿の付いたものを早く取り除くほうが効果的です。
磨くのは化学ではなく物理
重曹には研磨作用があります。これは中和とは無関係で、粒が汚れを削っているだけです。だから、削られては困る素材には向きません。
粉のまま使う

濡らせない場所と、液体を吸わせたいときに向きます。
こぼれた油や尿に粉をふりかけて吸わせ、まとめて取り除く、という使い方ができます。においの元になる材料を乾く前に持ち去る形になります。
粉を少し湿らせると、研磨のほうに寄ります。
向いている場面 … シンク磨き、靴や衣類の消臭、くすぶりの後始末、カーペットにこぼした液体

重曹水

拭き掃除、つけ置き、洗濯、消臭に。
水に溶かすとpH8.3前後の弱アルカリ性になります。
溶ける量は水温で変わる
水100gに溶ける量は、0℃で約6.9g、20℃で約9.6g、60℃で約16.4gです。
「100ccに何グラム」という一つの数字で覚えると、冷たい水では溶け残ります。溶け残るまで入れても、水溶液の濃さはそこで止まります。
なお、大さじ1杯が何グラムかは製品によって違います。粒の細かさで変わるので、量を決めたいときは重さで測ってください。
白い粉が残ったら
乾いたあとに白い点が残るのは、溶けていた重曹が出てきているだけです。二度拭きするか、クエン酸や酢で拭き上げると取れます。
酸性のものは、塩素系の製品と混ぜないでください。有害な塩素ガスが出ます。
向いている場面 … ガラスのくもり、照明器具、エアコンのフィルター、ぬめり取り、車内の消臭
なお、野菜や果物を重曹水に浸けて農薬を落とす方法については、条件を確かめた研究があります。

重曹ペースト

液垂れさせたくない場所と、こすりたいときに。
重曹3に対して水1くらいで混ぜると、扱いやすい硬さになります。硬さは用途に合わせて調整してください。
傷つきにくい部類だが、傷がつかないわけではない
研磨材メーカーは、重曹を研磨材としてはやわらかい部類として扱っています。食品工場の洗浄や機械部品の再生に使われるのも対象を傷つけにくいためです。加えて水に溶けるので、洗い流したあとに残りません。
ただし、やわらかいことと傷がつかないことは別。力を入れて何度もこすれば、つや消しのような曇りは出ます。
仕上げ面には使わないでください。塗装面、鏡面、樹脂、アクリル、漆器、真珠のような光沢のあるものは、細かい傷が集まると曇って見えます。どうしても使うなら、目立たない場所で試してからにしてください。
向いている場面 … 鍋の焦げ落とし(アルミ製を除く)、茶渋、湯垢、瓶のラベルはがし
使い分けの目安
| 選ぶ理由 | 主な対象 | |
|---|---|---|
| 粉のまま | 濡らせない/液体を吸わせたい | こぼれた液体、靴、衣類 |
| 重曹水 | 広い面を拭きたい/つけ置きたい | 軽い皮脂汚れ、ぬめり、におい |
| ペースト | こすりたい/液垂れさせたくない | 焦げ、茶渋、湯垢 |
同じ汚れでも、ペーストのほうが落ちたり、粉のほうがよかったりします。順番に試してください。
使う前に確認したいこと
アルミ製品には使わないでください。表面の酸化被膜がアルカリに侵され、黒ずむことがあります。銅や真鍮も変色のおそれがあるため、使ったあとは水で洗い流します。
ペットに直接使うのはやめてください。耳の中や体に使う方法が紹介されていることがありますが、猫や犬は毛づくろいで口に入れます。においや皮膚のことは獣医師の領域です。
「安全だから、量も使い方も適当でいい」ではありません。重曹は扱いやすい部類ですが、医薬品としては禁忌も副作用も設定されていますし、煮立てれば別の物質(炭酸ソーダ)に変わって刺激も強くなります。掃除用のグレードは口に入れる前提の製品でもありません。


まとめ
- 使い方は粉・重曹水・ペーストの3つ。基準は「こすりたいか」「濡らせるか」
- 中和できるのは酸性のもの。酸化した皮脂や、脂肪酸系のにおいがこれにあたる
- 油脂そのものは中性なので中和できない。新しい油やこびりついた油に対してできることは限られる
- アンモニア臭には働かない。尿の付いたものを取り除くほうが効果的
- 研磨は中和とは別の、物理的な作用
- 傷つきにくいのは新モース硬度2.5とやわらかいから。素材のほうがやわらかければ傷はつく
- 溶ける量は水温で変わる。溶け残るまで入れても、濃さはそれ以上上がらない
- アルミは黒ずむ。ペットには直接使わない

参考文献
- 株式会社不二製作所「研磨材 重曹」(新モース硬度2.5、水溶性、用途)
- 「炭酸水素ナトリウム」『化学辞典(第2版)』森北出版 ― 水100gに対する溶解度、水溶液を65℃以上に熱すると炭酸ナトリウムになること
- 「炭酸水素ナトリウム」安全データシート(SDS)― 吸湿性、分解条件、避けるべき条件
- 消費者庁「雑貨工業品品質表示規程(二十七 合成洗剤、洗濯用又は台所用の石けん及び住宅用又は家具用の洗浄剤)」(塩素ガスに関する「まぜるな危険」の表示)


